セキュリティ / 認証

パスキーの仕組みを図解 ― パスワードがネットワークに流れないから安全

最近、スマホのアプリやサイトのログイン画面で「パスキーを使用」をよく見かけるようになりました。押すと顔認証だけでログインできるので、「スマホのどこかに保存したパスワードを、自動で読み出しているんだろう」と思っていたのですが、仕組みはまったく別物でした。しかも最初は「ちょっと調べてみるか」と軽い気持ちで取り掛かったのですが、これがとんでもなくメンドクサイ事になっていました。。。

ポイントは、一度登録したあとは、ログインのたびにパスワードがネットワークを流れないことです。

図で見てみます。

パスキーの仕組み

パスキーは、サイトごとに作る「鍵のペア」です。片方の「秘密鍵」はスマホの中にしまい、もう片方の「公開鍵」をサイトに渡しておきます。(パスキーそのものについては「パスキーとは」の記事で詳しく書いています)

① 最初に1回:パスキーを登録する
スマホ
ネットワーク
サイト(サーバー)
ID・パスワードを入力
ID・パスワード───▶パスキーを使えば、パスワードが流れるのはここが最後
本人だと確認
「パスキーを登録」→ 顔認証
このサイト専用の鍵のペアを作る
秘密鍵はスマホの中にしまう
(通信なし)
公開鍵を送る
公開鍵───▶漏れても困らない鍵
公開鍵だけを保存
② 毎回のログインパスワードは使わない
スマホ
ネットワーク
サイト(サーバー)
「パスキーを使用」
チャレンジ◀───問いかけ(毎回変わる乱数)
チャレンジを作る
顔認証で秘密鍵を使えるようにし、チャレンジに署名する
(通信なし)
署名を送る
署名───▶使い捨て
保存しておいた公開鍵で署名を確かめる → ログイン
毎回のログインでネットワークを流れるのは、チャレンジと署名だけ。パスワードも、秘密鍵も、顔の情報も流れません。
  • パスワードを使うのは、パスキーを登録するときの本人確認までです。
  • 毎回のログインでは、サイトからの「チャレンジ(問いかけ)」に、スマホが秘密鍵で「答え」を返すだけ。パスワードも秘密鍵も、ネットワークには出ていきません。
  • 顔認証は、スマホの中の秘密鍵を使えるようにするためのものです。顔の情報がサイトに送られることはありません。
用語:チャレンジ

ここでいう「チャレンジ」は「挑戦」ではなく、サイトが出す「問いかけ」のことです。中身は、ログインのたびに作り直される使い捨ての乱数(でたらめな数字)です。スマホは、このチャレンジに秘密鍵で署名して「答え」として返します。

毎回ちがうチャレンジに答えるので、たとえ通信をのぞき見されて前の答えを知られても、次のログインには使えません。

なぜ最近あちこちで使われているの?

  • 偽サイトにだまされる被害が増えた:本物そっくりの偽サイトに、パスワードや確認コードを入力させる手口(フィッシング)が増えています。日本でも 2025 年 3 月ごろから、偽サイトで盗まれたパスワードによる証券口座の乗っ取りが急増しました(金融庁の注意喚起)。これを受けて、証券会社には、ログインなどの大事な操作でパスキーのような「フィッシングに強い認証」が求められるようになりました(Impress Watch の記事)。
  • 機種変更しても使えるようになった:2022 年 5 月に、Apple・Google・Microsoft の 3 社がパスキーへの対応をそろって発表しました(Apple の発表)。同じ年の秋からは、iPhone(iCloud キーチェーン)や Android(Google パスワード マネージャー)で、パスキーを自分のアカウントの端末どうしで安全に引き継げるようになりました(Google の発表(英語))。「スマホを替えたら使えない」という心配が小さくなり、パスキーを使えるサイトが増えるきっかけになりました。
  • どのスマホやパソコンでも使える:共通の決まり(WebAuthn という標準)で動くので、iPhone・Android・Windows・Mac で、そろって使えます。
  • 使う人も楽:パスワードを覚えたり、入力したりしなくて済みます。

どんな危険から守ってくれるの?

危険パスワードだとパスキーだと
偽サイトにだまされる(フィッシング)入力したら盗まれるパスキーは本物のサイトのアドレスと結び付いているので、偽サイトでは使われない
サイトから会員情報が漏れるパスワード(を変換したもの)が漏れて、解読されるおそれがあるサイトにあるのは公開鍵だけ。漏れても、それではログインできない
同じパスワードの使い回しほかのサイトで漏れたパスワードで、乗っ取られるサイトごとに別の鍵なので、使い回しがない
盗み見・推測入力するところを見られたり、当てられたりする覚えるものも、入力するものもない
通信ののぞき見盗まれたパスワードは何度でも使われるチャレンジが毎回変わるので、盗んだ答えは使えない

ただし、パスキーが守ってくれるのはログインの入口です。スマホやパソコンに入り込んだウイルスや、ログインしたあとの乗っ取りなどには、別の対策(OS やアプリを最新にする、怪しいアプリを入れない、など)が必要です。

次の記事で

「パスキーってそもそも何なの?」は「パスキーとは」で、鍵のペアとチャレンジ(問いかけ)の関係を図で説明しています。スマホが返す「答え(署名)」の仕組みは「署名の仕組み」で書いています。パソコンの Windows Hello とパスキーの関係は「Windows Hello の仕組みを図解」で書いています。用語の整理や、パソコンからスマホのパスキーを使う仕組みなども、別の記事で掘り下げていく予定です。

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